3DCGソフトとして世界的に有名なBlender(ブレンダー)。3Dモデリングやアニメーション制作に使われることが多いが、実は動画編集機能も備えていて、カット編集からテロップ挿入、BGM追加まで、ひと通りの動画編集作業がBlender1つで完結する。
「Blenderで動画編集もできるって聞いたけど、実際どの程度使えるの?」「Premiere ProやDaVinci Resolveのような専用ソフトと比べてどうなの?」という疑問を持っている人も多いだろう。この記事では、Blenderの動画編集機能の使い方からメリット・デメリット、向いている人・向いていない人までわかりやすく解説していく。

Blenderの動画編集機能「ビデオシーケンスエディタ(VSE)」とは
Blenderには「ビデオシーケンスエディタ(Video Sequence Editor / VSE)」と呼ばれる動画編集モジュールが搭載されている。Blenderは1990年代半ばにオランダのトン・ローセンダール氏によって開発が始まり、2002年にオープンソース化された統合型3DCGソフトで、3DCG制作・2Dアニメーション・VFXデジタル合成などの機能に加えて、この動画編集機能も標準装備している。
そして何より完全無料だ。商用利用にも一切の制限がないため、フリーランスの映像クリエイターや個人のYouTuber、企業の映像チームにとっても導入コストゼロで始められる選択肢になる。
Blenderの動画編集でできること
- 動画ファイル・画像ファイルの読み込みとカット編集(分割・削除・並べ替え)
- テキスト(テロップ)の追加とフォント・色・サイズの調整
- BGM・効果音の追加と音量のフェードイン・フェードアウト
- トランジション(クロスフェードやワイプなど)の適用
- 色補正・カラーグレーディング(カラーバランスストリップ)
- 速度変更(スローモーション・早送り)
- 3DCGシーンのレンダリング結果を直接タイムラインに配置して合成
Blenderで動画編集を始める方法(ステップバイステップ)
ステップ1:ビデオ編集ワークスペースを開く
Blenderを起動したら、スタートアップ画面の中央にある「ビデオ編集(Video Editing)」を選択する。するとビデオシーケンスエディタに適したレイアウトが自動的にセットアップされ、タイムラインとプレビュー画面が表示される。
ステップ2:動画素材を読み込む
タイムライン(シーケンサー)エリアの上部メニューから「追加(Add)」→「ムービー(Movie)」を選択して動画ファイルを読み込む。画像ファイルは「画像(Image)」、音声ファイルは「サウンド(Sound)」からそれぞれ追加できる。ドラッグ&ドロップでの読み込みにも対応しているため、エクスプローラーやFinderから直接ファイルを放り込むこともできる。
ステップ3:カット編集する
タイムライン上のストリップ(素材クリップ)を選択し、Kキーを押すとその位置で分割(カット)される。不要な部分のストリップを選択してXキーまたはDeleteキーで削除すれば、基本的なカット編集が完了する。ストリップの両端をドラッグすればトリミングも可能だ。
Blenderは視点切り替えなどでテンキーを標準的に使う設計になっている。テンキーレスのキーボードやノートPCで使うなら、外付けテンキーがあると操作の窮屈さが解消される。
ステップ4:テロップ(テキスト)を追加する
「追加」→「テキスト(Text)」でテロップを追加できる。右側のプロパティパネルでフォント・サイズ・色・位置の調整が行える。ただし、テロップのデザインやアニメーションの自由度は専用の動画編集ソフトと比べると限定的で、凝った装飾をしたい場合はやや手間がかかる。
ステップ5:BGM・効果音を追加する
「追加」→「サウンド(Sound)」で音声ファイルを読み込んでタイムラインに配置する。音量の調整はストリップを選択してプロパティパネルから設定できる。フェードイン・フェードアウトはキーフレームで制御する。
ステップ6:トランジションを追加する
2つのストリップの端を重ね合わせた状態で、両方を選択して「追加」→「トランジション」からクロスフェードやワイプなどのトランジション効果を適用する。種類は専用ソフトほど多くはないが、基本的なものは一通りそろっている。
ステップ7:書き出し(レンダリング)する
「レンダー」メニューから「アニメーションレンダリング」を選択して動画を書き出す。出力プロパティでコンテナ形式(MP4推奨)、コーデック(H.264推奨)、解像度、フレームレートなどを設定してからレンダリングを開始する。

Blenderで動画編集するメリット
完全無料で商用利用も制限なし
Blenderはオープンソースソフトウェアのため、ダウンロードから利用まで一切の費用がかからない。商用利用にも制限がなく、企業の業務利用でもライセンス費用の心配がない。
3DCG・VFXとの強力な統合
Blenderの最大のアドバンテージは、3Dモデリング・アニメーション・VFX・動画編集がすべて1つのソフトで完結する点だ。3Dで作ったキャラクターやオブジェクトを、レンダリングしてそのまま動画のタイムラインに配置できる。これは、Premiere ProやDaVinci Resolveでは実現できないBlender独自の強みだ。
クロスプラットフォーム対応
Windows・macOS・Linuxのすべてに対応しているため、OSを問わず同じ環境で作業できる。チームメンバーが異なるOSを使っていても、プロジェクトファイルの互換性に問題がない。
活発なコミュニティとアドオン
Blenderには世界中に活発なコミュニティがあり、ユーザーが開発したアドオン(拡張機能)も豊富だ。動画編集を強化するアドオンも存在しており、公式サイト(blender.org)で情報を確認できる。
ただ、Blenderは機能が広い分だけ最初の全体像がつかみにくい。日本語で書かれた入門書を1冊手元に置いておくと、独特の操作体系に迷ったときの手がかりになる。
Blenderで動画編集するデメリット
動画編集に特化したUIではない
Blenderは本来3DCGソフトとして設計されているため、動画編集のUIはPremiere ProやDaVinci Resolveのような専用ソフトと比べると直感的ではない。メニュー構成やショートカットキーの体系が3DCG寄りで、動画編集だけを目的に使う場合は学習コストがやや高い。
テロップ機能が弱い
テキストの装飾やアニメーションの自由度は、Premiere ProやAfter Effectsと比べると限定的だ。フォントの影付け、縁取り、背景ボックスといった装飾を加えるには追加の工夫が必要で、凝ったテロップ演出をしたい場合は別のソフトとの併用を検討した方がよい。
プレビューが重くなることがある
特に4K以上の高解像度素材を複数トラックで扱う場合、プレビューが重くなることがある。プロキシ編集機能は搭載されているものの、専用ソフトほどのスムーズさは期待しにくい。
Blenderは3Dビューポートも動画のプレビューもGPUの影響を受けやすい。動作の重さが気になるなら、グラフィックボードの見直しが効きやすいポイントになる。
日本語の情報がまだ少ない
Blenderの動画編集機能に特化した日本語の解説記事やチュートリアル動画は、3DCG関連と比べるとまだ少ないのが現状だ。英語のドキュメントやYouTubeチュートリアルを参照する場面も出てくるだろう。
Blenderの動画編集機能は年々改善が進んでいるが、Premiere ProやDaVinci Resolveなどの専用ソフトと同等の快適さを期待すると、ギャップを感じる可能性がある。自分の用途に合ったソフトを使い分けるのがおすすめだ。
Blenderが向いている人・向いていない人
Blenderの動画編集が向いている人
- 3DCG・VFXと動画編集を1つのソフトで一貫して行いたい人
- 完全無料のソフトで動画編集に挑戦したい人
- Linux環境で無料の動画編集ソフトを探している人
- 既にBlenderを3DCG制作に使っていて、追加のソフトを入れたくない人
- オープンソースソフトウェアの理念に共感している人
Blenderの動画編集が向いていない人
- テロップやエフェクトを多用するYouTube動画を効率よく作りたい人
- 直感的でわかりやすいUIで手早く編集したい人
- TikTokやInstagramリール向けのショート動画を大量に生産したい人
- チーム内でPremiere Proなどの業界標準ソフトに統一する必要がある人

よくある質問(Q&A)
Q. BlenderとDaVinci Resolveはどちらを選ぶべき?
制作内容による。カット編集・カラーグレーディング・テロップを中心に使うならDaVinci Resolve、3DCGとの統合を重視するならBlenderが適している。どちらも無料で使えるので、両方インストールして試してみるのが一番確実だ。
Q. Blenderの動画編集は処理が重い?
素材の解像度やエフェクトの使用量による。4K以上の素材を扱う場合は、16GB以上のメモリとGPUがあった方がスムーズだ。Blender公式の推奨スペックページを参考にしよう。
3Dシーンと動画編集を行き来する使い方が増えてきたら、視点操作を専用に任せる3Dマウス(SpaceMouse)という選択肢もある。マウスと併用して両手で操作できるようになる。
Q. Blenderで作った動画はYouTubeにアップロードできる?
もちろんできる。書き出し設定でMP4コンテナ・H.264コーデックを選択すれば、YouTubeにそのままアップロード可能な動画ファイルが生成される。
まとめ
Blenderのビデオシーケンスエディタは、専用ソフトほどの使いやすさはないものの、完全無料で基本的な動画編集をこなせる実力を備えている。特に3DCG素材との統合が必要な映像制作では、他のソフトにはないメリットを発揮する。
- Blenderのビデオシーケンスエディタ(VSE)で動画編集が可能
- 完全無料・オープンソースで商用利用も制限なし
- 3DCG・VFXとの統合がBlender最大の強み
- テロップ機能やUIの直感性は専用の動画編集ソフトに劣る
- 3DCG映像を制作する人にはベストな選択肢になりうる



