スポーツのハイライトシーンや水しぶき、ペットのジャンプ。スローモーションで見ると、肉眼では捉えきれない瞬間の美しさに気づくことがある。映画やCMでもおなじみの演出だが、実はスマホや無料の編集ソフトでも簡単にスローモーション動画を作ることができる。
この記事では、スローモーション動画の基本的な仕組みから、撮影時のポイント、PCソフトやスマホアプリでの具体的な作り方まで、初心者にもわかりやすく解説する。

スローモーションの仕組みとフレームレートの関係
スローモーションの仕組みは、実はとてもシンプルだ。通常の動画は1秒間に24〜30フレーム(コマ)で構成されている。これを「フレームレート」と呼び、24fps(frames per second)や30fpsと表記する。
スローモーションを作るには、通常よりも高いフレームレート(60fps、120fps、240fpsなど)で撮影し、それを24fpsや30fpsで再生する。たとえば120fpsで撮影した映像を30fpsで再生すると、実時間の4倍の長さになり、4倍スローの映像が得られる。
フレームレートが高いほど、よりスムーズで滑らかなスローモーション映像になる。iPhoneでは最大240fpsでの撮影が可能で、これを30fpsで再生すると8倍スローの映像を作ることができる。
フレームレートとスロー倍率の関係
再生フレームレートを30fpsとした場合の目安は以下のとおりだ。
・60fpsで撮影 → 2倍スロー(軽いスローモーション効果)
・120fpsで撮影 → 4倍スロー(はっきりとしたスローモーション)
・240fpsで撮影 → 8倍スロー(劇的なスローモーション効果)
・960fpsで撮影 → 32倍スロー(スーパースローモーション)
撮影時のポイント
高フレームレートで撮影する
美しいスローモーションを作るには、撮影段階で高フレームレートに設定しておくことが重要だ。通常の30fpsで撮影した動画をソフトで無理やりスローにすると、フレームが足りずにカクカクした映像になってしまう。撮影前にカメラの設定を確認し、60fps以上で撮影しよう。
十分な明るさを確保する
高フレームレートで撮影すると、1フレームあたりのシャッタースピードが速くなるため、通常の撮影よりも多くの光が必要になる。暗い環境では映像がノイズだらけになってしまう。屋外の日中や、十分な照明がある室内で撮影するのが望ましい。
室内で撮る機会が多いなら、手持ちの照明を1灯足しておくだけでも撮影できる時間帯の幅が変わってくる。
被写体の動きを意識する
スローモーションで映えるのは「動きのあるシーン」だ。水が跳ねる瞬間、髪がなびく瞬間、ボールを打つ瞬間など、通常速度では見逃してしまうような瞬間を狙って撮影しよう。逆に、あまり動きのないシーンをスローにしても効果は薄い。
三脚やジンバルで安定させる
手ぶれもスローになると強調されるため、三脚やジンバルを使ってカメラを安定させよう。手持ちで撮影する場合は、脇をしっかり締めてホールドすることが大切だ。
歩きながら撮る、被写体を追いかけるといった動きのあるカットを狙うなら、電動のジンバルを使う方法もある。

PCソフトでスローモーション動画を作る方法
Premiere Proの場合
Premiere Proでは「速度・デュレーション」機能を使ってスローモーションを作成する。タイムライン上のクリップを右クリックして「速度・デュレーション」を選択し、速度を50%にすれば2倍スロー、25%にすれば4倍スローになる。「タイムリマップ」機能を使えば、クリップの一部分だけをスローにすることも可能だ。通常速度からスローモーションに滑らかに移行する「スピードランプ」演出も作れる。
DaVinci Resolve(無料)の場合
DaVinci Resolveではクリップを右クリックして「クリップ速度を変更」を選択し、速度のパーセンテージを指定する。さらに高度な速度調整が必要な場合は、Editページの「リタイム コントロール」を使うとよい。キーフレームを使った部分的な速度変更も可能で、無料版でも制限なく利用できる。
公式サイト:DaVinci Resolve公式
Filmoraの場合
Filmoraではクリップをダブルクリックして「速度」タブを開き、「均一速度」でスライダーを左に動かすだけでスローモーションが作れる。0.01倍速から100倍速まで幅広く対応している。「速度カーブ」機能を使えば、Premiere Proのタイムリマップと同様のスピードランプ演出も可能だ。
スマホでスローモーション動画を作る方法
iPhoneの標準カメラアプリ
iPhoneのカメラアプリには「スロー」モードが搭載されている。設定で120fpsまたは240fpsを選択でき、撮影するだけで自動的にスローモーション動画が作成される。撮影後に写真アプリで編集すれば、スローにする区間の開始点と終了点を自由に調整できる。
Androidスマホのスロー撮影
多くのAndroidスマホにもスローモーション撮影機能が搭載されている。Galaxyの「スーパースローモーション」やPixelの「スローモーション」など、メーカーごとに名称は異なるが基本的な機能は同じだ。機種によって対応するフレームレートが異なるため、事前にスペックを確認しておこう。
高フレームレート撮影は1秒あたりのデータ量が一気に増えるため、書き込み速度が追いつかず撮影が途中で止まることがある。カメラで撮る場合は、記録メディアの速度規格も合わせて確認しておきたい。
CapCut(無料アプリ)
撮影後の動画をスローにしたい場合は、CapCutが便利だ。動画を読み込んで「速度」をタップし、「通常」モードでスライダーを左に動かすだけでスロー再生ができる。「曲線」モードでは速度変化のカーブを細かく調整でき、スピードランプ演出も作れる。
通常の30fpsで撮影した動画をソフトでスローにすると、フレーム間の情報が不足してカクつく。AI補間機能を持つソフト(Filmoraの「オプティカルフロー」やDaVinci Resolveの「スピードワープ」)を使えば、フレーム間を補間してある程度滑らかにできるが、高フレームレート撮影には及ばない。
スピードランプ(速度変化)のテクニック
スピードランプとは、通常速度からスローモーションに徐々に切り替わる(またはその逆)の演出テクニックだ。映画やミュージックビデオでよく使われる手法で、動画にドラマチックな印象を加えることができる。
基本的なスピードランプの作り方
Premiere Proの場合:クリップを右クリック→「クリップのネスト化」→エフェクトコントロールの「タイムリマップ」→「速度」にキーフレームを打ち、スローにしたいポイントで速度を下げる。キーフレーム間のベジェハンドルを調整すれば、速度変化を滑らかなカーブにすることができる。
CapCutの場合:「速度」→「曲線」モードで、プリセットの速度カーブ(「モンタージュ」「ヒーロー」など)を選ぶだけで、プロっぽいスピードランプが簡単に作れる。自分でカーブを描いてカスタマイズすることも可能だ。

よくある質問(Q&A)
Q. 通常速度で撮った動画もスローにできる?
A. 可能だが、30fpsの動画を2倍スロー(15fps相当)にするとカクカクした映像になる。AI補間(オプティカルフロー)に対応したソフトを使えばある程度滑らかにできるが、元から高フレームレートで撮影した映像ほどの品質は得られない。
Q. スローモーション撮影すると画質は落ちる?
A. 機種によっては、高フレームレート撮影時に解像度が制限される場合がある。たとえばスマホで240fps撮影すると1080pに制限されるケースが多い。4Kで撮りたい場合は60fpsまでに抑える必要があることが多い。撮影前に解像度設定を確認しよう。
なお、4Kや高フレームレートの素材はファイルサイズが大きく、PCの内蔵ストレージだけではすぐに空きが足りなくなる。素材を外付けに逃がしながら編集する人も多い。
Q. スローモーションの音声はどうなる?
A. 速度を落とすと音声も引き延ばされて低い音になる。通常はスローモーション部分の音声をミュートにし、BGMやSE(効果音)を別途追加するのが一般的だ。
Q. どのくらいのスロー倍率が見やすい?
A. 一般的な用途では2〜4倍スロー(60〜120fps撮影)が見やすい。8倍以上のスーパースローは、水しぶきや爆発の瞬間など特別なシーンで効果的だが、日常的なシーンに使うと間延びして退屈に感じることがある。用途に合わせて使い分けよう。
スローモーションが映えるシーンと使い方
スポーツ・アクションシーン
サッカーのシュートの瞬間、テニスのインパクトの瞬間、スケートボードのトリックなど、スポーツのハイライトシーンはスローモーションとの相性が抜群だ。通常速度では一瞬で終わるアクションを、スローで引き伸ばすことでダイナミックさと美しさを強調できる。
自然・風景の映像
雨粒が水面に落ちる瞬間、花びらが舞う様子、波が砕ける瞬間など、自然の動きをスローモーションで撮影すると、肉眼では捉えきれない美しさを映像に収められる。特に光と水の組み合わせはスローモーションで非常に幻想的な映像になるため、試してみる価値がある。
プロモーション・CM動画
商品紹介やブランドのプロモーション動画でも、スローモーションは効果的に使われている。商品にかかる水しぶき、布が風に舞う動き、食材が弾ける瞬間など、商品の魅力をスローモーションで強調する手法は広告業界でも定番だ。
スローモーション動画は、適切な撮影設定と編集テクニックさえ押さえれば、誰でも映画のようなドラマチックな映像を作ることができる。まずはスマホの高フレームレート撮影から試して、動画の新しい表現を楽しんでほしい。


