企業の社内研修やオンライン講座で、eラーニング用の動画教材を自作したいと考える方が増えています。外注すれば手間はかかりませんが、費用がかさみますし、更新のたびに追加コストが発生してしまいます。
この記事では、eラーニング動画を自分で作るための具体的な手順と、見やすい教材に仕上げるためのポイントを解説します。PowerPointやスマートフォンなど、身近なツールを活用した方法も紹介するので、予算が限られている方にも参考になるはずです。

eラーニング動画とは?活用されるシーン
eラーニング動画とは、学習目的で制作された動画教材のことです。主に企業の社内研修、新入社員教育、資格取得の講座、大学や専門学校のオンライン授業などで活用されています。
テキストだけの教材と比べて、動画は視覚と聴覚の両方から情報を伝えられるため、理解度が高まりやすいという特長があります。また、受講者が自分のペースで繰り返し視聴できるため、学習効率の面でも優れた手段です。
eラーニング動画の主な種類
- スライド録画型:PowerPointなどのスライドに音声を乗せるタイプ。制作が比較的簡単
- 講師登壇型:講師がカメラの前で解説するタイプ。親近感が出やすい
- 画面収録型:PCの操作画面を録画して解説するタイプ。ソフトウェア研修に向いている
- アニメーション型:イラストやアニメーションで解説するタイプ。抽象的な概念の説明に適している
このうち講師登壇型や、スライドの隅に講師の顔を出すタイプでは、映像の入り口としてWebカメラが必要になります。ノートPC内蔵のカメラより画角と画質に余裕があるものを選ぶと、教材としての見栄えが安定します。
eラーニング動画を作る前の準備
学習目標を明確にする
動画を作り始める前に、「この動画を見た受講者がどんな知識やスキルを身につけるべきか」を明確に定めておくことが大切です。ゴールが曖昧なまま制作を進めると、内容が散漫になり、学習効果が下がってしまいます。
台本・構成案を作る
eラーニング動画は「わかりやすさ」が命です。いきなり撮影を始めるのではなく、台本や構成案を作ってから制作に入るのが鉄則です。各セクションの所要時間、説明の順序、強調したいポイントなどを事前に整理しておきましょう。
1本の動画は5分~15分程度に収めるのが理想的です。長すぎると集中力が続かないため、テーマごとに動画を分けて短く仕上げるのがおすすめです。

eラーニング動画の作り方【5つのステップ】
ステップ1:スライドや資料を準備する
PowerPointやGoogleスライドで教材のベースとなるスライドを作成します。文字は大きめに設定し、1スライドに情報を詰め込みすぎないことがポイントです。図解やイラストを活用すると、視覚的にわかりやすい教材になります。
ステップ2:音声を収録する
スライドの内容に合わせてナレーションを収録します。収録方法は主に2つあります。PowerPointの「スライドショーの記録」機能を使う方法と、OBS Studioなどの画面録画ソフトを使う方法です。
マイクはPC内蔵のものよりも、USBコンデンサーマイクやピンマイクを使うと音質が格段に良くなります。静かな環境で収録することも重要です。
ステップ3:カメラで講師を撮影する(講師登壇型の場合)
講師が画面に登場するタイプの教材では、カメラで講師を撮影します。スマートフォンのカメラでも十分な画質が得られますが、三脚に固定して手ブレを防ぎましょう。背景はシンプルに整え、照明で顔が明るく映るように調整します。
ステップ4:動画を編集する
撮影・収録した素材を動画編集ソフトで仕上げます。テロップの挿入、不要部分のカット、BGMの追加などを行います。eラーニング動画では、重要なキーワードをテロップで表示すると理解が深まります。
編集ソフトはPremiere ProやDaVinci Resolve(無料版あり)、Filmoraなどがよく使われています。
ステップ5:LMS(学習管理システム)にアップロードする
完成した動画をLMS(Learning Management System)やYouTube(限定公開)、社内ポータルサイトなどにアップロードして配信します。SCORM形式に対応したLMSを使えば、受講者の学習進捗を管理することも可能です。

eラーニング動画のクオリティを上げるコツ
音声品質にこだわる
映像がきれいでも、音声が聞き取りにくいと学習効果は大きく下がります。eラーニング動画では音声品質が最優先です。外部マイクの使用、静かな環境での収録、ノイズ除去の編集を心がけましょう。
立って解説する講師登壇型では、机に置くタイプのマイクだと声が遠くなりがちです。襟元に付けるピンマイクなら、動いても口元との距離が変わりにくくなります。
字幕を付ける
音声を出せない環境で視聴する受講者もいるため、字幕は非常に重要です。Premiere Proの自動文字起こし機能やVrewなどのツールを使えば、字幕作成の手間を大幅に削減できます。
クイズや確認問題を挟む
動画の途中や最後にクイズや確認問題を挟むと、受講者の理解度をチェックできるだけでなく、能動的に学習に参加してもらう効果も期待できます。
定期的に内容を更新する
法改正やルール変更など、内容が古くなった教材はすぐに更新することが重要です。自作であれば外注費をかけずに更新できるため、常に最新の情報を受講者に届けられます。
eラーニング動画制作に使えるツール
- PowerPoint:スライド録画機能で手軽に教材動画を作成できる
- OBS Studio:無料の画面録画ソフト。スライドと講師映像の同時収録も可能
- Canva:テンプレートを使って見栄えの良いスライドを短時間で作成できる
- DaVinci Resolve:無料で使えるプロ仕様の動画編集ソフト
- Vrew:AIによる自動字幕生成が可能な編集ツール
ソフトが揃っても、講師を撮影する場面では照明が足りずに顔が暗く映ることがよくあります。小型のLEDライトを1灯足すだけでも、教材の印象は変わります。

eラーニング動画制作の注意点
- 著作権のある画像・BGM・フォントを無断で使用しない
- 個人情報や社外秘の情報が映り込まないよう注意する
- 動画ファイルの容量が大きすぎるとLMSへのアップロードに時間がかかる場合がある
- スマートフォン視聴を想定し、文字サイズは大きめに設定する
eラーニング動画のSEOと配信の工夫
動画のタイトルと説明文を最適化する
YouTubeやVimeoなどの動画プラットフォームで公開する場合は、タイトルに検索されやすいキーワードを含めましょう。「〇〇研修」「〇〇の基礎」など、受講者が検索しそうなワードを意識してタイトルを設定するのがポイントです。説明文にはeラーニング動画の概要と学習目標を記載し、関連する動画へのリンクも掲載しておくと視聴の導線が作れます。
マイクロラーニングの活用
マイクロラーニングとは、1本3分~5分程度の短い動画で学習を進める手法です。通勤時間や休憩中にもスマートフォンで気軽に視聴できるため、受講率が高まりやすいというメリットがあります。長い講義内容をテーマごとに細かく分割し、短い動画のシリーズとして提供すると効果的です。
受講者のフィードバックを反映する
動画教材を公開したら、受講者からのフィードバックを積極的に収集しましょう。「わかりにくかった部分」「もっと詳しく知りたい部分」などの声を次回の制作に反映させることで、教材の品質が継続的に向上します。LMSにはアンケート機能が搭載されているものも多いため、活用するとよいでしょう。

eラーニング動画に関するよくある質問
Q. eラーニング動画の制作費用はどれくらいですか?
自社で内製する場合、最低限の機材費(USBマイク・照明など)として1万円~3万円程度あれば制作を始められます。外注する場合は、1本あたり5万円~30万円程度が一般的な相場ですが、内容の複雑さやアニメーションの有無によって大きく変わります。内製のメリットは、更新時に追加費用が発生しない点にあります。
Q. 動画の長さは何分くらいが適切ですか?
1本あたり5分~15分が適切とされています。研究によると、学習動画は6分を超えると視聴完了率が下がるというデータもあります。長い内容は複数の短い動画に分割し、テーマごとに区切ることで、受講者の集中力を維持しやすくなります。
Q. 顔出しなしでも効果的な教材は作れますか?
スライド録画型や画面収録型であれば、講師が顔を出さなくても十分に効果的な教材を作ることができます。ナレーション音声とスライドの組み合わせだけでも、わかりやすい教材になります。ただし、講師の顔が見える動画の方が親近感が生まれやすいため、可能であれば冒頭と締めだけでも顔出しするとよいでしょう。
Q. スマートフォンで収録した動画でも大丈夫ですか?
スマートフォンでの収録でも十分な品質の教材を作ることができます。三脚にセットして手ブレを防ぎ、外付けマイクで音声品質を確保すれば、専用カメラに引けを取らない映像が得られます。iPhoneの場合は4K撮影にも対応しているため、画質面でも不足はありません。
スマートフォンで撮る場合にいちばん効くのが固定です。高さと角度を決められる三脚があると、複数回に分けて収録しても画角が揃います。
Q. 動画のファイル形式は何がおすすめですか?
LMSにアップロードする場合は、MP4形式(H.264コーデック)が最も互換性が高くおすすめです。解像度はフルHD(1920×1080)が一般的ですが、スマートフォンでの視聴がメインであれば720pでも十分な場合があります。ファイルサイズとのバランスを考えて設定しましょう。
まとめ
eラーニング動画は、スライド録画や画面収録など、身近なツールを使って自作することが十分に可能です。大切なのは、学習目標を明確にしてから台本を作り、音声品質にこだわって制作すること。1本の動画は5分~15分にまとめ、テーマごとに分割すると受講者の集中力を保ちやすくなります。
eラーニング動画の詳しい制作フローはBizcan「eラーニング用動画の作成方法」でも紹介されています。また、制作のメリットやトレンドはムビサク「eラーニング動画の作り方」が参考になります。


