せっかく撮影した動画なのに、エアコンの「ゴー」という音や、外の風切り音が入ってしまった経験はありませんか。映像は良いのに音がうるさいと、視聴者はすぐに離脱してしまいます。
音声のノイズリダクション(ノイズ除去)は、動画のクオリティを格段に引き上げる重要な編集工程です。この記事では、ノイズの種類から、具体的な除去方法、おすすめのソフト・ツールまで、わかりやすく解説していきます。

動画に入りやすいノイズの種類
まずは、よく問題になるノイズの種類を把握しておきましょう。種類によって対処法が異なります。
定常ノイズ(バックグラウンドノイズ)
エアコン、換気扇、PCのファン音など、一定の周波数で持続するノイズです。編集ソフトの「ノイズプロファイル」機能を使えば比較的簡単に除去できます。ノイズリダクションが最も得意とする種類です。
突発的なノイズ
咳払い、物が落ちる音、ドアの開閉音など、不規則に発生するノイズです。定常ノイズのように自動除去が難しいため、手動でカットするか、専用のクリック・ポップ除去ツールで対処します。
リバーブ(反響音)
広い部屋や硬い壁の空間で録音すると発生する残響音です。一度録音された反響は完全に除去するのが難しいため、撮影時に吸音材や毛布で対策しておくのがベストです。
風切り音
屋外撮影で発生しやすいノイズです。ウインドスクリーン(風防)を使った撮影時の対策が最も効果的ですが、編集段階でもローカットフィルター(ハイパスフィルター)である程度軽減できます。

音声ノイズリダクションの基本的なやり方
ステップ1:ノイズプロファイルを取得する
多くのノイズリダクションツールでは、まず「ノイズだけが鳴っている部分」を選択して、ソフトにノイズのパターンを学習させます。この工程を「ノイズプロファイルの取得」と呼びます。
撮影時に数秒間の「無音(環境音のみ)」を録っておくと、この工程がスムーズに進みます。
そもそも環境音を拾いにくいマイクを使えば、この工程の負担自体が減ります。口元に近づけられるピンマイクは、後処理を軽くする手段としてよく使われています。
ステップ2:ノイズリダクションを適用する
ノイズプロファイルを基に、ソフトが該当する周波数帯のノイズを自動で除去します。除去の強度はスライダーで調整でき、強くしすぎると音声自体が「水中にいるような」こもった音になるので注意が必要です。
ステップ3:細かい調整を行う
ノイズリダクション後に、イコライザー(EQ)で不要な低音域をカット(ハイパスフィルター)し、コンプレッサーで音量のバラつきを均一にすると、さらにクリアな音声に仕上がります。
ノイズリダクションに使えるソフト・ツール
無料で使えるソフト
- Audacity:無料の音声編集ソフト。ノイズリダクション機能が標準搭載されている
- DaVinci Resolve(Fairlight):動画編集と音声編集を一つのソフトで完結できる
- NVIDIA RTX Voice / Broadcast:NVIDIA製GPUを搭載したPCで使えるリアルタイムノイズ除去ツール
有料・AI系ソフト
- Adobe Premiere Pro(エッセンシャルサウンド):AIベースのノイズ除去機能が搭載されており、ワンクリックで高精度なノイズ処理が可能
- iZotope RX:業務用のオーディオリペアソフト。映画やテレビの音声編集現場で広く使用されている
- CrumplePop:Final Cut Pro向けのAIノイズ除去プラグイン
スマホアプリ・オンラインツール
CapCutやVNなどのスマホアプリでも基本的なノイズ除去が可能です。また、Adobe Podcast(Web版)では、音声をアップロードするだけでAIが自動でノイズを除去してくれる「Enhance Speech」機能が利用できます。

ノイズリダクションの注意点
かけすぎは禁物
ノイズリダクションを強くかけすぎると、声が「ロボットのような」不自然な音質になったり、こもったように聞こえたりします。ノイズが完全にゼロになることを目指すのではなく、「気にならないレベル」に抑えるのが正解です。
元の録音品質が重要
後処理でできることには限界があります。撮影時にピンマイクやショットガンマイクを使い、できるだけ口元に近い位置で収録するのが、クリアな音声を得るための最善策です。
被写体にマイクを付けられない場面では、狙った方向の音だけを拾いやすいショットガンマイクが選択肢になります。カメラの上に載せて使うタイプが一般的です。
モニターヘッドホンで確認する
スピーカーではノイズが聞こえにくい場合があるため、ヘッドホン(できればモニター用)で音声を確認しましょう。視聴者もイヤホンやヘッドホンで聴いている可能性が高いため、その環境での聴こえ方を基準にします。
AIノイズ除去は便利ですが、BGMや効果音が入っている音声トラックに使うと、音楽も一緒に除去されてしまうことがあります。ナレーションとBGMは別トラックに分けてから処理しましょう。
撮影時にできるノイズ対策
後処理に頼る前に、撮影段階でノイズを減らす工夫も重要です。
- エアコンや換気扇を止めてから録音する
- 外部マイク(ピンマイクやショットガンマイク)を使用する
- 屋外ではウインドスクリーン(風防)を装着する
- 反響が少ない部屋(カーペットやカーテンのある部屋)で録音する
- 録音前に数秒間の「無音」を録っておく(ノイズプロファイル用)
この中でも屋外撮影で効くのが風防です。マイクに被せるウインドスクリーンは種類も価格帯も幅があるので、使っているマイクのサイズに合うものを選びましょう。
ノイズリダクションの実践テクニック
Audacityでのノイズ除去手順(ステップバイステップ)
Audacityは無料ながら高性能なノイズリダクション機能を持っています。具体的な手順は以下の通りです。
- 音声ファイルをAudacityに読み込む
- ノイズだけが鳴っている部分(無音区間)を範囲選択する
- メニューの「エフェクト」→「ノイズリダクション」を選択
- 「ノイズプロファイルの取得」をクリックしてノイズパターンを学習させる
- 音声全体を選択(Ctrl+A)する
- 再度「ノイズリダクション」を開き、「感度」と「周波数スムージング」を調整してOKをクリック
感度は6〜12の範囲で調整するのがおすすめです。高すぎると声が不自然に劣化するため、少しずつ上げながらプレビューで確認しましょう。
イコライザー(EQ)でノイズの帯域をカットする
ノイズリダクション後にもまだ気になるノイズが残っている場合は、EQで特定の周波数帯をカットします。エアコンや換気扇の低周波ノイズなら、100Hz以下をローカットするだけでかなりスッキリします。逆に高周波のホワイトノイズが気になる場合は、8kHz以上をハイカットするのが効果的です。
コンプレッサーで音量の均一化を図る
ノイズ除去後に声の音量がバラバラになっている場合は、コンプレッサーで均一化します。レシオは3:1〜4:1程度、スレッショルドは声のピークが-6dB前後になるよう設定すると、聞きやすくまとまった音声に仕上がります。
複数のノイズが混在するケースの対処法
実際の録音環境では、エアコンの「ゴー」という音と、PCファンの「サー」という音が同時に入っているケースが珍しくありません。こうした場合は、一度にすべてのノイズを除去しようとするのではなく、ノイズの種類ごとに複数回のノイズリダクションを行うと、より自然な仕上がりになります。

この一連の処理は、耳で聞き分けながら詰めていく作業です。前述のとおりスピーカーでは残ったノイズに気づきにくいため、モニターヘッドホンを1つ用意しておくと判断がしやすくなります。
よくある質問(Q&A)
Q. 音声ノイズ除去はスマホだけでもできる?
できます。CapCutにはノイズ除去機能が搭載されており、タップ一つで背景ノイズを軽減できます。手軽に試したい方にはおすすめです。
Q. 無料ソフトと有料ソフトの差はどのくらい?
軽度のノイズであれば無料ソフト(Audacity等)でも十分対処できます。ただし、重度のノイズや複数種類のノイズが混在するケースでは、iZotope RXのような有料ソフトのほうがかなり高品質な結果が得られます。
Q. リアルタイムでノイズ除去しながら配信できる?
NVIDIA BroadcastやOBSのノイズ抑制フィルターを使えば、ライブ配信中にリアルタイムでノイズを除去できます。
まとめ
音声のノイズリダクションは、動画の視聴体験を左右する重要な工程です。撮影時の対策と編集時のノイズ除去を組み合わせることで、プロのようなクリアな音声に仕上げることができます。

参考リンク:

